相続しない場合でも手続きは必要?遺産分割協議と相続放棄の違いを解説します

2019.12.29

相続手続きの中で、遺産分割協議は、相続放棄をする場合には要らないのではないか、と思っている方がいるかもしれません。

ひとことに相続放棄と言っても、その法的な意味合いが違っていると手続き上にも影響します。皆さんが混乱しないよう詳しく説明いたします。

遺産分割協議

亡くなられた方(被相続人)が所有していた財産は誰が相続するのでしょうか。被相続人が遺言書を残していない場合は、相続人全員によって遺産相続についての話し合うことになります。

この遺産相続の話し合いのことを、遺産分割協議といいます。

遺産分割協議の結果、相続人中の1人が遺産のすべてを相続することになったとします。

遺産の中には、現金や銀行預金、不動産(土地、家)もありますが、ここまでのプラスの財産とは逆に、マイナスの資産である借金もかなりの金額が残っています。

このプラスと、マイナスどちらの財産も、すべて1人が引き継ぐことになります。

そこで、プラスの遺産だけでなく、借金、保証債務などといったマイナスの財産のすべてを記載した遺産分割協議書を作成し、相続人の全員が署名押印をします。

この遺産分割協議書により、相続人は銀行預金の解約(払い戻し)手続きや、不動産の名義変更をおこなうことができます。

プラスとマイナスの財産

そのときに「預金や不動産も一切受け取らない代わりに、借金も背負わない」という話をすでに相続人間でまとめていたり、「兄は何もいらないと言っていたから、遺産分割協議書にはんこもらわなくていいよね」とか、「遺産分割協議を相続人の間で済ませたし、私は相続放棄しています」と言う方がいます。

特に、疎遠になってしまっている相続人や、あまり関わりたくない、煩わしい手続きなどできれば誰かに任せたい、という考えの相続人がいるケースです。

遺産分割協議と相続放棄の違い

今まで述べてきた遺産分割協議で「預金も不動産も何も受け取らないと決めました」ということは、「相続放棄」をしたことと同じと思われるかもしれません。しかし、厳密に言えば、これは相続放棄をしたことにはなりません。

遺産分割協議で「財産は何も受け取らない」と決めることと、「相続放棄」をすることとは、どちらも「プラスの財産については引き継がない。何ももらいません」という点では同じ意味です。

しかし、実は、亡くなった方のマイナスの財産、つまり借金については、性質が全く違ってきます。

マイナス財産の相続

では、どのように違うのかと言いますと、遺産分割協議で「財産は何も受け取らない」と決めたとしても、亡くなった方の借金の返済義務はなくならないということです。

債権者の立場

そもそも遺産分割協議とは、どの財産を、誰が、どれだけ貰うか、借金はどうするかを相続人間で取り決めるだけのものですから、相続人以外の他人に主張することができません。

他人がその遺産分割協議の内容を知るすべが基本的にないのと同じです。他人というのは、相続人でない第三者ですから、銀行などのことを指します。

つまり、亡くなった方にお金を貸していた銀行などは、遺産分割協議の内容に関係なく、相続人の誰に対しても、相続する権利のある人に対して「亡くなった方の借金を返してください」と請求することができます。

とくに銀行などの金融機関は貸し倒れのリスクを極端に嫌いますので、まず間違いなく亡くなった方の借金は相続人全員に弁済請求をしてきます。

こちらは相続人である以上、借金返済の義務は法的に発生していますので、財産をなにももらわないことにした相続人だったとしても、「遺産分割協議で何ももらわないことになったから、私は亡くなったひとの借金は払いません」と主張して請求を拒むことができないのです。

このように、遺産分割協議での「何ももらわない代わりに借金も背負わない」と決めることと、家庭裁判所で行う「相続放棄」とは、似ているようですが違うものなのです。

相続放棄とは

相続放棄とは、どういうものでしょうか。つまりは、家庭裁判所での手続きをとって初めて「相続放棄」ということになりますので、正確に言えば遺産分割協議で「相続放棄」をすることはできないのです。

相続放棄は家庭裁判所で手続きします。相続放棄をした人は、その相続については、最初から相続人で無かったものとみなされます。相続人ではなくなるので、相続債務を支払う義務を負うことはなくなるわけです。

法律上の効力がある相続放棄をするには、家庭裁判所での手続きが必要です。家庭裁判所に相続放棄の申述を行って、それが受理されることによりはじめて、法的な意味での相続放棄が認められたことになるわけです。

 それ以外にも、「遺産放棄をしたい」や「権利放棄をする」といった言葉を使う方もいらっしゃいますが、これも、裁判上の相続放棄ではなく、遺産分割協議によって財産を放棄することの意味合いで相談者様が使われているのだと思います。

遺産分割協議と相続放棄のどちらを選択するか

「私は別に財産はいらないわ」という方や、「跡を継ぐ人にすべて財産を渡せたらそれでいい」と思われるのでしたら、遺産分割協議をするよりも、借金の返済義務のリスクがなくなる相続放棄をされたほうが、後々面倒なことに巻き込まれることも心配も少なくなります。

また、亡くなった方にどれだけ借金があるか分からない、と思われる方は、家庭裁判所でいう「相続放棄」又は「限定承認(詳細は別記事に記載)」の手続きをとることをお勧めします。

もう少し詳しくみていきます。

債権者へ対抗

 遺産分割でもたしかに財産をもらいたくない人は全てを放棄できます。もちろん、財産を放棄したい以上、借金などの債務も受けたくないわけですから、遺産分割で「私は預貯金や不動産も一切受け取りません。

その代わり、借金も負いません」といった内容にすることができます。この遺産分割協議の内容は有効ですから、当然ながら遺産分割で財産放棄をした人は借金を支払う義務はない、と考えるはずです。

しかし、実際はそうではないのです。相続人全員の間で遺産分割協議をしているので、もちろん他の相続人からは亡くなった人の借金を支払えと請求されることはありません。

では債権者からみたらどうでしょうか?

債権者にとってみたら、特別に遺産分割協議に参加しているわけではありませんし、相続人間の協議内容なんて知りようがありません。さらに、返済能力の無い相続人が借金全てを引き受けた場合、債権者の立場はどうなるのでしょうか。 

こういった場合、債務に関する内容は、債権者に主張することができませんので、相続人全員が法定相続分の割合により、支払い義務を負ったままとなります。

たとえ、遺産分割協議の内容の中で誰か特定の人が借金を全て負うとなっていたとしても債権者に主張することはできません。

自分は遺産相続を放棄したから借金の支払い義務は無いというように勘違いされている方も多いようですが、相続人間の合意だけでは相続放棄とは認められません。

債権者としては、特定の相続人による債務引受けの合意がなされていない限り、相続人全員に対して支払いを求めることが可能なのです。

これはあくまで内部で話し合った内容を対外的に主張することができるとなると債権者の権利が害されてしまうこととなるため、遺産分割協議で借金の引受の内容については債権者に主張することができないようになっているのです。

それに相続人とすれば、相続放棄といった裁判上での別手続きをとることによって、財産放棄をすることがます。そのため、遺産分割で借金を負わないとすることを認める必要がないわけです。

期限

相続放棄については「相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」に行わなければなりません。よってその期限が過ぎてしまうと原則認めてもらうことはできません。

しかし、遺産分割についていえば期限の定めはありません。被相続人が亡くなってからすぐやろうが5年後になろうが20年後になろうが、いつやっても問題はないです。
 
これは、遺産分割は相続人間の内部的な話し合いですることが前提となっているので、期限を設定することがないことが理由にあげられます。

それに対して、裁判所での相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も全てを相続しないといった対外的な効果もあるので、なるべく早く権利関係を確定させなければいけないことから3ヶ月という短い期限制限が設けられています。
 
債権者からすれば相続人の中で誰が相続放棄したのかいつまでも分からない状態が続くと、借金の請求をどの相続人にしていいのか判断がつきません。こういった債権者を保護するためにも相続放棄には期限が設定されています。

期限内に申述したとしても、相続放棄の申述が家庭裁判所に却下されてしまうと、再度の申立を行うことはできません。家庭裁判所へ相続放棄の申述が出来るのは一度きりなのです。

家庭裁判所の手続き

遺産分割と相続放棄の大きな違いの一つとして、家庭裁判所の手続きが必要か否かという点があります。

これまで説明してきたとおり、遺産分割はあくまで相続人間の内部的な手続きなので、相続人だけで全てを完結することが可能です。

しかし、相続放棄は対外的な効果もある以上、家庭裁判所に対する申述が必要となってきます。

相続放棄の手続きは自分自身でできないことはありませんが、慣れない方が行ってしまうと時間がかかってしまい、相続放棄の期限に間に合わなくなってしまうことがあります。

なるべく早い段階で準備していていただくか、専門家に依頼するのがよいでしょう。

まとめ

「相続人のうちのひとりだけ相続放棄してから遺産分割をしたい」
「次順位まで全部まとめて相続放棄をお願いしたい」
「遺産分割協議から、相続不動産の名義変更まで依頼したい」
「自分が放棄したらそのあとはどうなるのか」
「借金があるのかどうか分からないので相続放棄したほうがよいか判断できないがどうしたらよいか」
など、ご質問にお答えしながら、多様なニーズに応じてご対応させていただきます。

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